2009年7月10日(金) 『別誂神棚 総木曽桧製 茅葺通し三社造』
手汗などが付くと白木作りの品は台無しになってしまいますが、毎日のうちに長年精進続けるとこのような職人さんの手になります。
さて今回は三重県四日市市の神社様のご紹介でこの神棚を別誂製作させていただきました。今までお祀り頂いていました神棚も以前宮忠で別誂製作させていただいた神棚でした。
伊勢の神宮も20年に一度遷宮をされるように、このお客様も遷宮をされました。
神棚の総巾は以前の神棚よりも少し大きくして丁度1メートルに作りました。奥行きは祀り所の都合で54センチ、総高さは75センチです。(写真1)
一般家庭には少し大きな神棚ですが、このお客様は信心深く祀り所を特別にお作りになり、正面には御簾(みす)を吊られています。今回はこの御簾も新調させていただきました。
今回のこの神棚は別誂えですから、規格の神棚とは細部において違う仕事がされています。
- 縁の丸束柱には貫(ぬき)が、上と真ん中に2本通されています。これが入ることで強度が格段に上がり、見た目にも足元がすけすけにならずどっしりとした感じになります。(写真2)
- 階段部分の昇り高欄(手摺部分)ですが規格の神棚は板昇り高欄(K7,K10など)や簡単な昇り高欄(K3など)になりますが今回の別誂神棚は1本の材料から曲がり部分を刳り出して神社建築のように本格的な仕事がされています。
このサイズの神棚でこの仕事をしてある神棚は少ないと思います。(写真3) - 高欄の架木(ほこぎ)の丸棒を受けている束にきっちりとくびれの仕事がされています。1個1個に鑿(のみ)で切り込んでいきます。また他の部材の木口(こぐち)には当然のように鉋(かんな)が掛けられ、そのうえに面取りがされています。(写真4)
私もよく先代の工場長から「面を取らんような仕事はするな!」と教えていただいた事を思い出します。 - お扉や階段、架木、儀宝珠柱(ぎぼしはしら)に取り付けられている錺金具は全て京都の職人が、厚手銅板地金に手打ちで彫り柄をいれて本金鍍金仕上げしたものを取り付けています。やはり色艶といい重厚な感じの中にも柔らかい感じを持ち合わせた上品な仕上がりになります。木曽桧の材にも本当によく似合います。(写真5)
- 笠木(かさぎ)回りも、4本の内削ぎ(うちそぎ)の千木(ちぎ)に明けられた穴は、1個ずつ丁寧に仕事がされて綺麗に仕上がっています。10本の堅魚木も中央が膨れた形に削り上げられ、本金鍍金の錺金具が前後両面に取り付けられています。内削ぎの千木と偶数の堅魚木を配するのは、伊勢神宮の内宮型になります。(写真6)
- 今回の神棚は祀り所の都合で茅葺屋根を前7:後3の片屋根造りにしました。これに合わせて縁・高欄も胴の後柱にきちんと掘り込まれて納まっています。(写真7)
祀り所の寸法が充分にある場合は茅葺屋根を前後同じ流れにして両屋根造りに仕上げます。縁・高欄もこれに合わせて胴の後ろまで回り込ませる回廊式になります。 - 屋根裏も別誂ですから、前屋根だけでなく後ろ屋根共に桁の上に本格的に垂木(たるき)が取り付けられています。破風(はふ)に付けられた鞭掛(むちかけ)8本も職人の手で元の四角材から先に向けて綺麗な正八角に削り出されています。
どこまでも気合が入っています。(写真8) - 内陣は間仕切りに柱が入れられこの柱に突かれた小穴(みぞ)にしっかりと間仕切り板が入れられています。別誂の三社造りですから内陣もちゃんと3部屋に分けられています。
また御神札やご神体をお祀りいただいたときに低い位置になりすぎないように、また反対に大きな御神札でもお祀りが出来るように取り外し式の床板が取り付けられています。
このあと三殿のお扉に扉帳が取り付けられます。(写真9)
別誂でお作りさせていただく神棚は、お祀りされるご神体の大きさやお祀り場所の大きさ、また使い勝手など、色々な方向からお客様のご要望を聞かせていただき製作させていただきます。
宮忠はこのように一つ一つ別誂でお作りさせていただくお仕事も得意分野です。このために職人を育てています。
このお仕事の後すぐに、今度は淡路島のお客様からご注文いただいた別誂神棚を2社製作させていただきます。この神棚もお客様のご要望をしっかりとお聞きさせていただき細部にわたって打ち合わせを行って製作させていただく運びとなりました。
完成しましたらまたこの日記にてご紹介させていただきます。
真新しい御簾の中にこの神棚が祀られましたらきっと素晴らしい神棚になることでしょう。
今回も良いお仕事をさせていただきまして誠にありがとうございます。